【限怪】完璧なアンドロイドアイドル
"アイドルは完璧な偶像でいてほしい"
そんな人々の願いから近未来では「アンドロイドアイドル」が誕生。老いることもなく、寿命は人間より長い。振り付けも歌唱も完璧、握手会では来てくれた人全員の名前もエピソードも覚えている。完璧な偶像がそこにはあった。
最初こそ好発進だ。アンドロイドとは思えぬ表情に動き、受け答えもスムーズで人間と比べても遜色なく、アイドル界の超新星として様々なメディアが取り上げた。
話題もあって忙しくなるも数日は充電不要のバッテリー、人間と違い疲れ知らずの機械仕掛けの体で様々な仕事を卒なくこなしていく。
しかしそれも終わりを告げる。
「完璧すぎて隙がない」からと飽きられ始めたのだ。完璧を求めて作られた存在が完璧を理由に人々から必要とされなくなる。
偶像はスケジュール管理やボディのメンテナンスを担当した、出会った頃よりやつれた顔の男に問いかけた。
「私は求められなくても"アイドル"なんでしょうか、プロデューサーさん」
偶像が存在意義を問い直すことで"完璧"でなくなったのは皮肉なものだ。男はその言葉に一筋の涙を流すだけだった。
#限怪