白瀬咲耶に溶かされる。
私が白瀬咲耶のテキストを読むとき、「溶ける」という表現をすることがある。これは咲耶の言葉に彼女の体温を感じ、私の心が溶けていく様を指している。
咲耶をスカウトしたとき、彼女は既に偶像だった。スタイルや運動神経は抜群で、誰にでも優しく、永遠に誰かを喜ばせ続けようとする。しかし理想の自分を追い求めるうち、感情は二の次になってしまった。自分の気持ちをしまい続けて、ついに気づくことすらできなくなっていた。事務所でひとりぼっちになった、あの日までは。さまざまな出来事を経て、咲耶とプロデューサーの距離は測り直される。咲耶が頑丈にかけてしまった錠を開けても良いのは、彼女が特別と認める人だけだ。初めて双方向のコミュニケーションを取ろうとしたとき、お互いの心が厚いパーソナルスペースで覆われていることに気がついた。だから私たちは、私たちの体温を持って、壁を徐々に溶かしていくことにした。言葉を交わす度、秘められた強い熱が伝わる。でも優しい咲耶の言葉は熱くはない。それは確かに一人の女の子の温かさだ。いつかその距離が0になる日を夢見て、私は今日も溶ける。
明日の #限怪 はかぐらさんです。