限怪
千佳は動き回るのが好きで、公園で魔法少女ごっこをするのが好きで、絵を描いたりするのも好き。魔法少女になれるのを信じてやまず、勉強は少し苦手だけど頑張るし、困った人には手を差し伸べるし、初対面の相手でも仲良くなれる。
9歳のころのわたしは、絵を描くのは好きだったけど運動は嫌いで、そもそも外が嫌いだった。プリキュアはみてたけど、おもちゃを買ってもらったことは一度もなかった。勉強は誰よりもできた。でも母曰く担任の先生はわたしを心配していたという。娘さんに仲良しのお友達は誰?と聞きましたら「いない」って仰るんですが、お母さん、大丈夫でしょうか。
友達がほしいと思ったことも運動ができたら楽しかろうと思ったこともなく、けれど心のどこかで魔法少女になりたいと屈託なく言えるような女の子になりたかったまま、わたしは大人と数えられる歳になってしまった。魔法少女にも、魔法少女を夢見る女の子にもなれなかった。
千佳はわたしがなれなかった女の子だ。わたしは千佳を通して、夢を見ているのだ。
千佳、お誕生日おめでとう。いつもわたしに夢を見せてくれてありがとう。明日からもどうか、わたしに夢を見せておくれ。
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