SS
「晴さ」
「ん、なんだよ。梨沙」
澄んだ朝の冷たさは痛いのに、梨沙はいつもの通りの薄着で、いつもの何倍も真面目に、眉ひとつ動かさずに問いかけてきた。
「晴ってさ、……私のこと、どう思ってるの?」
その言葉は聞き飽きた。
かれこれ何度か同じやりとりをした。
なのでオレも、これまでと同じように返す。
「友達、相棒。それじゃ充分じゃないってのか」
素直な気持ちだった。少なくともオレはそう思ってる。
でも梨沙は違うらしい。
どうやら梨沙は……オレに"好意"をもっているようなのだ。
Love、恋。そんなものにまだオレは興味をこれっぽっちも持っていなかったし、これから持つかもわからない。少なくとも梨沙には抱かないはずだ。
だから、この後の梨沙とのやり取りも、おそらくこれまでと同じ物になるだろう。
「なんでアンタは……アタシのことを好きって言ってくれないの……」
「好きだよ。友達としても仕事仲間としても」
「そんなこと聞きたいんじゃない!」
ほらな。やっぱりヒステリーを起こした。
オレと梨沙は、いつまでも平行線だろう。
いつから、こうなったんだろう。